生デニムとは
生(ロー)デニムは、織った後に、何の加工もしていないデニムである。洗いも、色落ち加工も、人工的なエイジングもしていない。織機から出たままの姿で、硬く、濃く、純粋である。ここから先の、皺、跡、汚れは、全て、着る人からつくられる。工場の工程ではない。

なぜ、最初は硬いのか
糸が、強く撚られ、締まっているからである。織りが密で、染料が、繊維に染み渡っている。柔らかくする処理も、していない。その硬さは、約束であり、挑戦でもある。「私は、あなたに抵抗する。慣らしてほしい。着るほどに、あなたに似ていく」と、公式サイトは、ジーンズの声として書いている。
耳(セルヴィッジ)が語ること
古い織機の、狭い幅
セルヴィッジは、シャトル織機で織った、という証拠である。糸を巻いたシャトルが、生地の上を行き来して、止まらずに織り続けるために、生地の幅は、広くできない。だから、セルヴィッジのジーンズは、狭い幅の生地から裁たれ、耳は、脚の外側の縫い目に来る。

内側に隠れた耳
耳は、生地の端で、顔ではない。裾を折り返さないと、見えない。控えめなのに、多くを語る、という説明を、公式サイトは添えている。
インディゴと、色落ち
インディゴは、繊維に染み込まない染料で、糸の周りに、層となって、重なる。擦れる所では、層が薄くなり、擦れない所では、残る。将来の色落ちは、染め方に、既に書かれている。層が多いほど、コントラストが強くなり、染料が薄いほど、色落ちは、緩やかになる。
ほとんど黒に見える生地は、インディゴの槽に、何度も浸けられたものである。浸けるほど、層が増え、色が濃くなり、光をほとんど吸収する。
手が青くなるのは、色が流れ出るのではなく、インディゴの粒が、機械的にこぼれ落ちるからである。これは、「クロッキング」と呼ばれる。撚りの強い糸ほど、表面積が大きく、よく落ちる。
「デニム」と「ジーン」の由来
公式サイトによると、「デニム」はフランスの言葉、「ジーン」はイタリアの言葉である。17世紀、フランスのニームで、織り職人が、イタリアの生地を再現しようとして、少し違う、丈夫なあや織りを、偶然作った。経糸をインディゴで染め、緯糸は染めない。この生地を、「serge de Nîmes(ニームのサージ)」と呼び、英語圏の人が、発音して、「デニム」になった。
ジェノヴァでは、船乗りの服のために、丈夫な生地がつくられた。ジェノヴァを、素早く言うと、フランス人の耳には、「ジーンズ」のように聞こえた。こうして、フランスの生地を、イタリアの生地から着想し、英語の名前で呼ぶ、早い時代のグローバル化の産物ができた。
待つ服
ファッションは、数分で変わる。生デニムは、色の変化が出るまで、半年かかる。二つの時間の流れは、合わない。だから、A.P.C. のジーンズは、流行を超えるのではなく、気にしない、とブランドは述べている。待つことが、この服の楽しみ方である。


