蓋の縁に赤と紺のストライプが手描きされた、生成りのトランク
MARQUAGE

マーカージュ入門──イニシャルとストライプの選び方

トランクの時代から続く、持ち主の印を手描きで入れる習慣。その由来と、選び方の視点をまとめる。

文 Shiori Kinugasa | 公開 2026.10.13 | 更新 2026.10.23 | 読了 3分 イメージ画像(AI生成):ストライプを入れたトランクのイメージ
世界に一つの印を、自分の鞄に。
それは、川の丸太に付けた印から始まった。

マーカージュとは

マーカージュ(marquage)は、ゴヤールの手描きのパーソナライゼーションだ。持ち主の名前やイニシャル、ストライプなどを、職人が筆で描き入れる。

起源は、川の丸太

フランソワ・ゴヤールの家業は、薪を筏で運ぶ川の仕事で、持ち主を見分けるために、丸太に印を付けていた。フランソワは、その技法をトランクづくりに取り入れ、以来、パーソナライゼーションはメゾンの中心的な技術になった。

切り口に持ち主の印が描かれた、積まれた丸太の絵
イメージ画像(AI生成):丸太に持ち主の印を付ける習慣を想像した絵

旅の荷物の「目印」

鉄道や客船の旅では、山積みの荷物のなかから、自分のトランクを見つけることが大切だった。描かれた頭文字や縞は、飾りであると同時に、実用の目印でもあったと考えられる。

どう選ぶか

選べるのは、フルネームまたはイニシャル、1本または複数のストライプ、鮮やかな色や落ち着いた色合い、そして幅広いモチーフとカラーである。選ぶときの視点を、編集部の考えとして、挙げておく。

  • イニシャル:文字の数と配色で、印象が大きく変わる。控えめにしたいなら、鞄の地色に近い色を選ぶ
  • ストライプ:本数と配色で、遠目にも自分の鞄と分かる。初めてなら、少ない本数が合わせやすい
  • モチーフ:好きな意匠を、一つだけの印にする。長く使うものなので、長く使うものなので、自分の好みで選びたい

しるしは、「色」でもある

ウィンザー公爵夫妻は、1939年に、初めてゴヤールを注文し、その後も生涯にわたって、トランクやスーツケースを買い続けた上顧客だった。作品は、公爵夫人が青と黄色、公爵が赤と黄色という、それぞれのトレードカラーで仕上げられている。

名前や頭文字だけでなく、色の組み合わせその物が、持ち主を表すしるしになる。ストライプの配色を選ぶときの、一つのヒントになるだろう。

作った人の印も、入っている

持ち主の印があるように、作った人の印もある。ゴヤールのトランクには、製造番号と、製作した職人のイニシャルが記される。全てのトランクは、南フランスのカルカソンヌにあるメゾンの工房で、専門の職人が数週間かけて、一つ一つ作る。

手描きの手順

職人が完全に手作業で、天然の顔料をベースにした独自の色を使う。ステンシル、筆、塗料、乾燥といった具体的な工程は、公式のページには書かれていない。愛好家向けの紹介記事には、ステンシルを使い、筆で塗料を重ねると書く物もあるが、公式の説明ではないので、ここでは詳しく書かない。

作業台に並ぶ筆、天然顔料の器、ストライプのステンシル
イメージ画像(AI生成):手描きの道具のイメージ

納期と料金

オンラインでも

パーソナライズできる商品を並べたページがあり、オンラインのシミュレーターで、仕上がりを確認できる。2026年10月11日に確認したときの対象は96点で、バッグ、財布・カードケース、ポーチ、パスポートケースなどが並び、各商品は11色から選べた。サン・ルイも、このなかにある。

迷ったときの考え方

決めきれないときは、次のような順番で考えると、整理しやすい。

  • ふだんの持ち物の色を見る:鞄、靴、時計のベルトなど、よく身に着ける色のなかから、1〜2色を選ぶ
  • 文字は短くする:イニシャルだけにすると、鞄そのものの印象を邪魔しにくい
  • 仕上がりを確かめる:公式サイトのオンラインシミュレーターで、色と配置を見てから決める

マーカージュは、一つだけの印を持つということ。その由来を知ってから選ぶと、描かれた縞の一本にも、物語が見えてくる。

要点

POINTS
  • マーカージュは、名前やイニシャル、ストライプなどを、職人が筆で描き入れる手描きのパーソナライゼーションである。
  • 起源は、持ち主を見分けるために丸太に印を付けた、川の仕事にある。
  • 選ぶときは、文字は短く、色は普段の持ち物から決め、公式のシミュレーターで仕上がりを確かめると良い。
この記事を書いた人 Shiori Kinugasa
参考資料:Goyard 公式サイト「マーカージュアート」 https://www.goyard.com/ja_jp/the-art-of-marquage-by-goyard-jp Goyard 公式サイト「オンラインでパーソナライズ可能な製品」 https://www.goyard.com/ja_jp/online-personalisation.html Goyard 公式サイト「歴史」 https://www.goyard.com/ja_jp/goyard-history-jp (公式サイトの確認日:2026年10月11日)

CONTINUE READING