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紺と生成りのグログランのリボンが巻かれて置かれている
4-BAR

4本線とトリコロールを読む

袖の4本線と、赤・白・青のタブ。トム ブラウンの記号を、公式サイトと報道、そして裁判の記録から読み直す。

文 Shiori Kinugasa | 公開 2026.10.17 | 更新 2026.10.23 | 読了 4分 イメージ画像(AI生成):グログランのリボンのイメージ(ブランドの意匠は含みません)
記号は、ブランドの顔になる。
そして、ときに、争いのもとにもなる。

二つの記号

赤・白・青のタブ

トム ブラウンの服には、赤、白、青の縞のグログラン(畝のある織りのリボン)が付く。ブランドの記号として、広く知られている。全ての商品に、この縞のリボンが入る。

公式サイトのブランド紹介には、このリボンについての説明はない。NPR(アメリカの公共ラジオ)の記事は、このタブを、ロッカーのタブにヒントを得たものと説明している。同じ記事の写真の説明には、本人が、大学のスポーツのリボン(バーシティ・リボン)に着想を得たと述べている、とあり、本文とは表現が揃っていない。子どもの頃、7人兄弟の全員がスポーツをしていたことに由来する、という説明も、記者によるものである。

アメリカの国旗を表している、という説明は、今回、確認できた範囲では、本人の発言としては、見つからなかった。服飾の媒体には、赤・白・青を「アメリカの国旗の色」と書く物があるが、これは、色についての観察であって、本人の意図の説明ではない。

袖の4本線

もう一つが、袖などに入る、4本の線である。公式サイトでは、「4-BAR」という言葉が、商品名として使われているが、デザインの由来についての説明は、見当たらなかった。一方、アディダスとの裁判では、トム ブラウン側が、4本線は、アメリカの大学のアスリートが着たバーシティ・セーターやレターマン・ジャケットに着想を得たと、主張した。

グレーの上着の袖口の接写
イメージ画像(AI生成):袖口のイメージ(ブランドの意匠は含みません)

4本線の来歴

3本から、4本へ

4本線の始まりについて、NPRの記事は、次のように伝えている。アディダスは2006年、まだ小さなブランドだったトム ブラウンに連絡し、3本の横線を使うのをやめるよう求めた。トム ブラウンは、翌年に、4本目の線を足すことに同意した。別の資料は、2008年に、4本線の「シグネチャー」を発表したと書き、更に別の資料は、2009年から、商品に現れたと書いている。

年については、資料によって、2007年から2009年まで、幅がある。ここでは、「2000年代の後半に、4本線が現れた」と書いておく。

グログランとは

グログランは、横方向に細い畝のある、しっかりとした織りのリボンや生地のことだ。帽子の帯や、服の縁取りにも使われる。トム ブラウンでは、赤・白・青の縞の入ったグログランが、タブやループとして、服の内側や外側に付く。

なぜ、4本なのか

NPRの記事は、4本線が、ジャケットやトップスの左の袖と、スウェットパンツの左の脚に入ることを伝えている。4本という数は、3本線をやめるよう求められたあと、4本目を足す形で決まった。それ以上の意図は、今回確認できた範囲では、見つからなかった。

アディダスとの裁判

2021年 提訴

アディダスは、2021年6月、4本線の使い方が、自社の「3本線」の商標を侵害するとして、トム ブラウンを、ニューヨークの連邦地方裁判所に訴えた。求めた損害賠償は、約800万ドルとされる。

石の階段と円柱のある、ニューヨークの大きな裁判所の絵
イメージ画像(AI生成):ニューヨークの裁判所のイメージ(実在の建物を特定するものではありません)

2023年 陪審の評決

2023年1月12日、8人の陪審は、トム ブラウンが、アディダスの商標を、侵害も希釈もしていないと、評決した。約1週間の審理で、評議は、数時間で終わったと伝えられている。

その後

その後、第二巡回区の連邦控訴裁判所が、この判断を支持した。2024年11月22日には、英国の高等法院が、トム ブラウンの4本線は、アディダスの商標を侵害せず、消費者を誤認させないと判断した。The Fashion Law の年表には、2026年9月28日に、アディダスが連邦最高裁に、審理を求める申立てをしたとも書かれている。

ここで言えるのは、裁判の経緯と判断の結果である。ストライプという単純な記号が、ブランドにとってどれほど大きな意味をもつかを、この争いはよく示している。

記号の読み方

  • 記号はブランドの名刺になる:袖の4本線やタブがあれば、遠くからでもそのブランドと分かる
  • 意味は断片的にしか語られていない:着想は語られていても、色や本数の意味その物は、公式に説明されていない。そのぶん、見る人が自由に読める余地が残る
  • 単純な記号ほど守る必要がある:ストライプのような単純な意匠は、他のブランドと重なりやすい。裁判はそのことをはっきり見せた

記号の由来を知ろうとすると、分からないことが多く残る。それでも、その「分からなさ」ごと、ブランドの魅力になっているのかもしれない。

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要点

POINTS
  • 赤・白・青のタブと、袖の4本線が、ブランドの記号である。タブの由来は、報道によって表現が揃っていない。
  • 4本線は、アディダスから3本線の使用をやめるよう求められたあと、4本目を足す形で決まった。
  • アディダスとの裁判では、2023年に陪審が侵害を認めない評決を出し、2024年に英国の高等法院も、侵害せずと判断した。
この記事を書いた人 Shiori Kinugasa
参考資料:Thom Browne 公式サイト「ブランドについて」 https://www.thombrowne.com/jp/about Wikipedia(英語版)「Thom Browne」 https://en.wikipedia.org/wiki/Thom_Browne MikeLegal「Adidas Loses Trademark Lawsuit Against Thom Browne Over Stripe Design」 https://blog.mikelegal.com/ip-litigation/adidas-loses-trademark-lawsuit/ The Fashion Law「Adidas v. Thom Browne: A Timeline of a Trademark Clash」 https://www.thefashionlaw.com/adidas-v-thom-browne-a-timeline-of-a-trademark-case-over-stripes-sportswear/ WWD「U.S. Court of Appeals Affirms Verdict in Thom Browne v. Adidas Stripes Case」 https://wwd.com/business-news/legal/thom-browne-adidas-stripes-lawsuit-appeal-1236352881/ Trademark Lawyer Magazine「Thom Browne wins jury trial in Adidas’ lawsuit about Three-Stripes」 https://trademarklawyermagazine.com/fashion-brand-thom-browne-wins-jury-trial-in-adidas-lawsuit-about-three-stripes-mark/ NPR「Thom Browne's win against Adidas is also one for independent designers, he says」(2023年) https://www.npr.org/2023/01/25/1151270484/fashion-designer-thom-browne-scores-a-major-victory-against-adidas INVOKAT「Three Stripes vs. Four Bars: Adidas and Thom Browne’s Legal Debate」 https://www.invokat.com/2024/11/27/three-stripes-vs-four-bars-adidas-and-thom-brownes-legal-debate/ (公式サイトの確認日:2026年10月12日)

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